4月 30, 2020 未完成

彼女は俺から離さない

住む世界が違いすぎた。
彼女の名は朝霧香澄、学園一の美少女で、グラビア顔負けのスタイルと顔を有していながら胸も立っただけでも目を引くくらい大きく。スレンダーな体に肉付きのいい太もも。美しいラインを描くくびれ。学園一なんて過小評価すら思える。それにその身長、モデルと彼女が一緒に並んでも小さく見えてしまうほど、979センチもある長身。
そんな美人でありながら、学年トップの成績、毎回のテストは全科目満点。うちの学校は結構普通で彼女の成績ならここにいるはずがないのにどういうわけかこの学校を選んだだろうか。数学オリンピック大会も一回参加したことがあってダントツ一位だったらしい。
美人で頭がいい、それはもう完璧としか言いようがないのに、まだ忘れていることがある。彼女は運動においても劣っていなかった。
学校でのランニングはもちろん一位だけど。マラソンに参加して、それも一位だった。それに42.195kmの距離を、10分足らずで完走した。その速度は全コースでまるで50m走のような速度を出していた。それも男のギネストップ記録の5.56秒、足の長さを抜きにしてもはるかに上回る速度で完走し、終点に着いても深呼吸すら一つせずに平然と試合の場から離れていた。
ここまでなら彼女がどれほどすごいのかもうわかったでしょう。
俺といえば、それは至って普通の高校一年生で、成績は平均すら至っておらずやや下、体育になると逃げたくなるほど運動神経もない。それはもう普通だった。
そんな俺は、彼女、朝霧香澄とは違う世界に生きていることは一目瞭然のことである。俺もそんな高みを目指すはずもなく、羨ましさを通り越して彼女に対して俺はただただ妬ましかった。近づきすらしたくない。
ただ、俺と彼女が唯一同じのところといえば、それは、俺たちは同じクラスだった。
そんな住む世界が違うはずの俺たちだったのに、どういうわけか、彼女は頻繁に俺に話しかけてくる。
朝霧「映司くん〜。今日はいっぱい話ししましょう」
ほら見ろう、まだ一限目の授業が終わったばかりで、誰も机から上がってすらいないのに、朝霧さんだけはすでに俺の机の前に来ていた。クラスの天井は彼女のためだけにすごく高くなって、クラスで立ってもなんの影響もなかったけど。
そんな朝霧に対して、俺のとるべき行動は。
「啓介、昨日のアニメ見たか、すごかったよね」
啓介「おい、まだスルーかよ」
さっそく後ろにいる俺の親友と昨夜のアニメについて語っていた。
朝霧「映司くん、まだ無視するの…?」
しゅんとうなだれる朝霧。さっきのイキイキの声と打って変わって、こんなことだけで落ち込んでいるものなのだろうか。
そんな時に、横からちょっと図体が大きいそうないかにもヤンキーに見える佐藤がきた。
佐藤「てめぇ、高塚、まだ朝霧さんを無視するのか。俺なんて一度も声をかけてもら…」
朝霧「佐藤さんは引っ込んっでて、映司くんを怖がらせたら承知しないわよ」
佐藤「ひぃー、は、はい」
襟を掴みに来そうな勢いで出した手を朝霧に掴まれて。朝霧に怒らせたくないだろうか、それともその長身の前に威圧されていただろうか、慌てて佐藤は離れた。
けど、俺はそれを見るわけにはいかない、なぜなら、俺は朝霧を無視しているのだから。
そこで、さっきまで立っていた朝霧は机の横で蹲って、それでも俺たちよりは高いが、そのまま俺たちの話に割り込もうとする。
朝霧「私も昨日のアニメ見た、すごく面白かったよ。それにそれに、ブルーレイも予約したよ。映司くんと私の分の保存用、観賞用、布教用の六つも買ったよ。お揃いだね。原作のラノベとマンガも全シリーズ買ったから映司くんが見たいならいつでもあげていいよ」
啓介「毎回聞かされたけど本当にすごいな」
こんなこと高校生でも普通は買えないだろうけど、いろんな大会に出場して優勝した朝霧はもう金持ちと言っても過言ではなかったから多分嘘じゃないだろう。
「か、買わなくていいよ」
ここまで言われると、返事しないのはそれは失礼すぎたのだ。もちろん目は向けないけど。
朝霧「やった、映司くんやっと話してくれた」
「そんなことより、なんでまだ買ったのよ。絶対にしないでって何度も言ってるじゃない」
朝霧「だって、映司くん欲しかったじゃない。映司はそんな買える余裕がないから、私が映司くんの分を買ってあげる」
「それはこっちの事情だ。お前には関係ない」
朝霧「関係あるよ。映司くんが喜びそうなことなんでもしてあげたい」
啓介「うわ、もう結婚しろうよ」
「しねえし、何言ってるんだよ。まだそんなことするなら知らないからね。さあ、まださっきの話しよう、啓介」
朝霧「うぅぅ…」
さっさと切り上げて朝霧と話す時間は一秒でも減らさないといけない。なぜなら、俺はこんななにもかもそつなくこなせる人が最も嫌いだから。
啓介「映司本当にブレないね」
「なんの話かな。さあ、さっきの話。あのアニメさ…」
啓介「ま、映司がこんなことでいいなら、俺はなにも言えないけど」
それからは俺と啓介だけでオタク話を盛り上がって、朝霧はずっと横にいたが無視無視。

それから授業が終わればすぐにくる朝霧だが、俺は当然無視して啓介とオタク話をして、彼女の入れる隙を与えない。
どうして俺にこんなに執着するだろう。俺は彼女が嫌っても嫌がらせをするつもりがないが、でも俺に粘ってくるとそれは避けるしかなかった。本当、もし俺に当てなかったら、今頃もう仲良くなっていたのに、むしろ彼女と仲良くなりたい人は山ほどいたであろう。ラブレターも一日は10通以上はあるのに出向いてすらいない。
そんなこんなで朝の授業は終わっていた。
朝霧「映司くん。今日も映司くんのためによりをかけて弁当を作ってあげたよ」
何層あるか一瞬ではわからないほど積み上げられた弁当箱、こんなの一週間あっても食べきれないだろう。
朝霧「映司くんのためにいろんな種類作ったから、今日はなにが食べたい?このなかには…」
「啓介、購買でパンを買いに行くぞ、ちょっと付き合ってくれ」
高すぎて座っても前方が見えないから立ち上がってから啓介に昼飯の買いを誘った」
啓介「いいけど。本当にこれ食べないのか」
「なんのことか。さあ行こう」
啓介「よくもそんなものを見えないようにできるんだな」
俺と啓介が席から離れようとして、朝霧を回ってから、手を掴まれた。
「な、なによ」
朝霧「本当に、食べてくれないの…?」
咄嗟のことで後ろを向いて、今日初めて彼女の顔を見た。その整った顔に、今はすごく寂しそうに見えた。
「そ、そうよ。俺はパンを買いに行く」
それでも俺はくじけない、朝霧の誘いを絶対に乗らない。
朝霧「どうして…そんなに嫌なの?」
まだ手を掴まれて離してくれない、そんな朝霧は問いかけてくる。
「そ、それは…」
朝霧は真っ直ぐに俺を見てきて、俺の答えを待っている。けど嫌っていても、それを本人の前に言うのはあまりにも酷すぎたから俺は口ずさんでしまった。
「もう、わかったから、食べればいいでしょう。けど、啓介も一緒に食べさせるなら俺が食べる」
朝霧「うん!いいよ。映司くんがそう言うなら」
啓介「俺も?なんか悪いな」
「大丈夫よ、この量俺が食べきれるわけもないから」
朝霧「そうね〜。映司くんの残りは私が食べるから」
「いや、お前と一緒に食うつもりはない」
朝霧「え⁉︎」
パッと明るくなった顔もすぐにしゅんとうなだれて。本当、なんて俺のことでそんなに一喜一憂するだろう。
朝霧「映司くんと一緒に食べたかったのに」
啓介「映司、俺からのお願いだ。朝霧さんと食べてくれないかな」
そんな朝霧に助け船を出そうとする啓介。こんな親友のお願いを俺はすぐには断れなかった。
「そこまで言うなら…いい、だろう」
朝霧「本当⁉︎やった!山田さんありがとうね」
啓介「それはどうも」
そして朝霧は弁当箱を開けて、中身は大変豪華だった。開けた途端に教室に香りが蔓延し、それだけでもその弁当のうまさがわかる。
それの第一層を俺の前に置き、第二層は啓介に、そして残ったのを朝霧がもらった。
朝霧「はい、映司くん。山田さん」
俺たちに箸を渡ってきて、それで気づく、これは元々俺にあげる弁当だから、ここで啓介も一緒に食べたら、箸はもうないじゃない。
朝霧の方を見ると、やはりなにもなかった。残ったのは弁当箱しかいない。
「あ、朝霧さんはどうやって食べるの?」
朝霧「私?映司くんが食べ終わってからその箸を使って食べればいいよ」
「それは大問題だろう」
朝霧の弁当を食べてるのに、その朝霧自身は食べていないとか、失礼にもほどがある。
朝霧「なら、映司くんが食べさせてください」
「え?」
朝霧「もう箸がないからそれしか方法がないじゃない」
「俺は御免だ、啓介に当たってくれ」
啓介「俺は断じてそういうことしないからな」
まさか啓介も断るとか、やはり似た者同士だな、いい意味で。
「仕方がない…じゃあ俺が食べさせてあげる」
朝霧「うん!えへへ、映司くんに食べてもらえる」
満面の笑みを浮かぶ朝霧に、俺はつい顔を逸らして。弁当を一口食べる。
本当にうまい。朝霧は料理もとても上手だったようだ。やはりなんでもそつなくこなせる人は嫌い。
朝霧「どう?映司くん?」
「まあな」
それでも褒めるわけがない。
「ほら、お前も早く食って」
俺は箸を朝霧の弁当の方にさして、玉焼きを挟んでから朝霧の口に寄せた。
朝霧「うん!むぐむぐ」
俺が差し出した箸の前端を気にもせずに頬張って、朝霧は一口で玉焼きを食べ切れた。
朝霧「えへへ、映司くんに食べてもらうと、もっと美味しくなったよ〜」
「それは気のせいだな」
そしてまだ自分の弁当を食べる。
箸の前端に朝霧の唾液がついただろうか、なんか飯は甘くてさらに美味くなったような気がした。
もう一度食べてみてもやはりその味は消えずにずっと箸の先端に残っていた。
ていうか、これって間接キスじゃないか。
朝霧「映司くん?」
俺の反応が可笑しかったか、朝霧は首を傾げて見てくる。気づかれないために、俺はまだ彼女に食べさせた。
そうして俺は先に食べ終わって、朝霧の食べる量はダントツに多いから、あとはようやく箸を渡してこんなことをせずに済んだ。
ちなみにその俺が食べてるより5倍も多い量を朝霧は全部食べ切れた。

放課後に、俺は午後の授業で佐藤に言われた通り体育館裏に行った。
そこには佐藤一人しかいないが。彼は元々背が高く、195センチくらいあるかも。172センチの俺とは20センチ以上の差もある。そんな彼が俺に近づいてくる。
佐藤「お前、よくも毎日毎日朝霧さんを無視してたな。俺たちは話す機会もないのに。てめえは調子に乗りやがって」
俺が朝霧を無視することが佐藤の気に障ったのはずっと知っていたが、まさかここまでとは思わなかった。
佐藤は右手を拳に振りあげて、俺の顔面に狙ってくる。
これも仕方がないじゃない、このパンチくらいで済むなら、俺は受けてやるよ。目を閉じて受ける準備を整った。
朝霧「佐藤さん!まだ映司くんにちょっかいを出したら、私は容赦しないからね」
上から聞き覚えのある声。目を開けるとその右手は朝霧に掴めれて。朝霧はいとも簡単そうに片手で佐藤を目線の高さまで持ち上げた。190センチもある佐藤は数メートルもある高さまで持ち上げられ、朝霧の怒りに満ちた瞳に睨まれて、すぐに怯んでいた。
佐藤「も、もうしないから、は、離して」
朝霧「うん。わかったなら映司くんに近づかないでください」
地面に戻された佐藤はすぐにこの場から走って離れた。
そして朝霧は振り返って俺を見る。
朝霧「じゃあ映司くん、一緒に帰ろう?」
そんな強い力を見せられた直後、俺は断ることも出来ず頷くしかなかった。
こうして校門から出て、俺たちは帰る道を歩く。
道行く人はみんな朝霧に注目して、隣に歩くのはすごく恥ずかしかった。頭を俯いて見られないようにするのが精一杯だった。
朝霧「どうしたの、映司くん?」
それが可笑しかったのか、朝霧は心配そうにして問いてくる。
「い、いや…朝霧が高いって思っただけ。確か979センチだっけ?」
気づかれないためにほかの話を振って見た。
朝霧「979センチ?違うよ、それは入学の時の身長で、今は1378センチだよ」
「1378⁉︎」
入学から今まででも二ヶ月しかないのに。それってつまり一ヶ月で俺の身長より多く伸びていたのか。
朝霧のことは嫌いだけど、長身が好きの自分はそれを聞くと興奮が抑えられなかった。
朝霧「あれ、映司くんのそこ大きくなってない?もしかしてこういうの好きなの?」
「ち、違う」
見れないように少し体を屈んでいたが、すぐにバレてしまった俺は慌てて股間を隠す。
朝霧「そうか、映司くんってこういうのが好きだったのか。もっと早く知ればよかったのに」
クスクスと笑って、彼女はまだ言ってきた。
朝霧「実は私、小学一年生の時はもう195センチがあるだよ。その時すでに映司くん超えちゃったね。映司くんってまだ小一の私に身長越されたね」
言われてつい想像してしまう、まだ一年生の朝霧が俺の前に立って、「お兄ちゃんの背、私に越されちゃったね」って言われるのを。それはすごいな。
朝霧「今は一ヶ月だけでそれよりもっと伸びたけどね。医者さんはこれからもっと伸びるかも知れないっていうから今以上の速さになるかも」
「そ…そうか」
これでもまだ伸びるのか、そう考えるとますます興奮してしまう。
朝霧「映司くんのそこもっと大きくなったね。えへへ」
俺が股間を隠そうとすると、朝霧は蹲って両手を俺の腰あたりを丁重に掴んでから持ち上げた。
「は、離せ」
立ってきた朝霧は目線くらいの高さまで俺を持ち上げた。下半身がそのたわわのおっぱいに包まれそうなほどに近く寄せられて。下を見ると、3階から見下ろしているようだった。ここから落ちればそれだけで死んだだろうか。俺は丁重に掴まれていたが、さっき佐藤は片手で吊るし上げられたからそれこそ怖いだろう。
朝霧「映司くんかわいい〜。もう、大きい女の子が好きならここにぴったりの人がいるじゃない。映司くんが欲しいならなんでもしてあげたのに」
「早く離せ!」
怖いのせいか、いつも以上に大声をあげてしまって。それを聞いて朝霧はすぐに開放してくれたが、すごく落ち込んでいるようだった。
朝霧「もう、絶対に映司くんを怪我させるわけがないのにそんなに怖がって…」
そしてもう一度蹲ってきて、それでも俺より高いが、出来るだけ俺と同じ目線でいられるように見つめてくる。
朝霧「映司くんは、私のことが嫌いなの?」
「…」
まるで心を見透かされたようだった。それもそうのはず、俺は嫌いだからと今まで散々無視してきた、気づかないわけがない、むしろ早く気づいて欲しかった。
この際だからはっきりしようじゃないか。
「そうだよ。俺はお前みたいなやつが嫌いだ。大っ嫌い!」
俺の言葉を受けて、朝霧は今まで一番落ち込んでいるように見えた。俺の気持ちなんてそんなに重要だろうか、これを機にさっさとほかのやつに当たってくれればいいじゃない、早く俺を離して、違う世界に生きて。
朝霧「そんな、私、映司くんに嫌われるようなこと何かしたの?どうして映司くんは私を受け入れてくれないの?」
どうしてそこまで言っても伝わらないだろうか、朝霧はそれでも俺に縋り付く。
「だったら俺に拘らずに早くほかのやつに当たってくれよ。なんで俺ばかりに絡んでくるのよ、嫌がらせか」
つい吐き捨てるように言ってしまって、これでもう清々するだろう、安らかな日常に戻れる。
けど、朝霧はそうじゃなかったみたいだった。深呼吸一つして。
朝霧「そんなのできないよ。だって私、映司くんのこと、一番好きだもん!」
「え?」
その朝霧を見ると、顔が真っ赤になって、手で強く押しても、その熱気がこちらまで伝わってくる。女の子特有の香りに混じって鼻腔をくすぐる。
朝霧「だから、私は映司くんが好きだもん。世界一好き!大好き!」
「そ…そうか」
こんな美人に好きって言われると、嫌っていても頰が熱くなるのは止まらない。
「それでも、俺はお前が嫌いだ!」
それを振り切るように言い、これも俺の偽りのない本音だから。それだけ言い残し、俺は慌ててこの場から離れた。朝霧を残して。
朝霧「私、諦めないから。絶対に映司くんを好きになってもらうから!」
それだけが聞こえて、俺は明日がどうなるかわからなくなった。

翌日、学校に行って、教室の扉を開けて、席に着くすらいない時。
朝霧「映司くん!聞いて聞いて」
着席と同時に朝霧も俺の机の前までくる。当然俺は無視、授業の準備を整う。
朝霧「私、前日のテストも全科目満点だよ!映司くん」
なんでそんなこと言うの、俺を怒らせるためか。諦めないってまさか俺を陥れるに転じたのか。ただでさえその才能に恵まれたのを嫌っているのに、どうしてわざわざ言ってくるの?
啓介「すげーな。毎回満点なんて、相当に勉強に励んでいたな」
啓介の方はそんなことも知らずにただ感心の言葉を述べた。
そのおかげで朝霧も注意をそちらに引かれたようでありがたい。
朝霧「そんなことないよ。授業聞いて、宿題やっただけでできるよ。受験勉強も必要ない」
それ、ただの自慢話じゃないか。それにしてもこれしかやってないのにそれほどいい成績取れたのなら、本当に頭いいよな、天才ってレベルだな。
啓介「朝霧さんって本当に頭いいね。じゃあほかの時間はなにをしているのか?」
朝霧「もちろん映司くんの好きなアニメと漫画を一通り見て。それから、うぅぅ、映司くんのことばかり考えちゃって」
なにを言ってるのこいつ、俺がすぐ近くにいるのに、こっちが恥ずかしくなってしまう。
啓介「え、ええ…」
ほら、啓介もドン引きしてる。
啓介「てっきり運動とかしてたと思ったよ。朝霧さんスタイルもいいし、マラソンも一位だったから、きっとトレーニングとかいっぱいやってるよね」
朝霧「トレーニング?それはしないけど、なんかちょっと試してみたいって参加したら優勝しちゃったな」
まさかトレーニングすらしないのに気まぐれで参加したマラソンに一位のか。天才だけではなく、身体能力も抜群のか。本当こいうやつ、妬ましい。
啓介「すごいな」
朝霧「そうかな。それより、映司くん〜。昨日のアニメ、私も見たよ。一緒に語ろう?」
「…」
てっきりもっと時間取らせてくれると思ったが、朝霧は自分から話題を振ってきた。無視無視。
朝霧「むぅぅ、スルーの?」
机の前まで回ってきて、ほとんどうつ伏せになるように、体を俺の机上に預け、おっぱいを机の上に乗せた。お、大きい、朝霧の頭より大きい、俺の体を全部包み込めそうだ。そんなに大きいのが二つもあって、机がその質量に耐えられたのは奇跡とすら思えてくる。制服に収まられず第二ボタンまで開けて深い谷間が見られる。
朝霧「あ、映司くん顔赤くなってる。私のおっぱい大きいでしょう。実はね、これはXカップの。それも常人の身長で換算したのよ、もし直接測ったら、絶対Zカップ超えてたよ」
顔を近づいてきて耳元でそんなこと囁かれた、そんな内容聞かされて、ドキドキが止まらない。それでも俺は断じてそれを認めない。
「ち、違う。朝電柱にぶつかって、きっとあの時赤くなったから」
慌てて頰について言い訳をする。
朝霧「大丈夫⁉︎痛くないの?」
本当に信じてたらしく朝霧は手を差し出して、一本だけで俺の頰を覆えるほどの指で触れてくる、指だけでも女の子の手で触れらているように柔らかくて大きいな指で優しく触ってきて、なんかいい香りもするし、心地いい。
「いい、大丈夫だから、手を離して!」
押してもビクともしないが、俺がそうしていると朝霧はすぐに手を引っ込めて、しゅんとしていた。
なんか罠にはまった、無視のはずなのにこんなことになっちゃって。さっきまさかわざと胸を見せてきたのか。
もう知らない、あとは無視無視。
幸いこの時ホームルームが始まって、先生が入ってきた、朝霧も仕方なく自分の席に戻った。
このままだとまずい。朝霧がまだあんな風に攻めてきたら本当にバレてしまう。俺は本当にあいつを嫌っていたが。誘惑してくるようなことをされたら流石に興奮してしまう。
無視が伝わらないなら、今度は直接言ってやる。

朝霧「映司くん〜」
授業が終わってすぐ、朝霧はまだこっちにきた。
今ここで、はっきりしてやる。
「朝霧さん、俺に関わらないでください」
朝霧「えええ?」
なんで驚くだろう、嫌っているのは昨日はっきりと伝えたはずなのに、やはりそれが分かっていないからこうなったのか。
「俺なんかじゃなくて、ほかのやつに当たってくれ。ほら、佐藤さんも朝霧さんと話したいし、それならいいじゃないか」
呼ばれたのを聞いて佐藤はちょっと不服そうでこっちを見てくるだが、朝霧と話せるのを聞いてやはり嬉しそうだ。
俺も別に佐藤のこと嫌ってはいない、殴られそうだったが。償いとしても朝霧が離してくれればこっちとしては好都合だから。
朝霧「いやだもん。映司くんを傷つけようとした人と関わりたくない」
ガン、さっきはイキイキしていた佐藤は頭を垂れて、今でも泣き出しそうだった。ほら、慰めてあげてよ。
朝霧「それに私は映司くんと話したいもん」
「…」
俺にこだわる理由はもう知っていたが、ここまで言っても引き下がらないとは思わなかった。
朝霧「映司くんは長身が好きでしょう。私ならいっぱい見せていいのに」
「バカ!そんな話ここで言っちゃダメだって」
幸いそんなにでかいな声でもなく、教室のさざめきに消された。
朝霧「大丈夫だよ。これは私と映司くんのひみつだから。みんなには教えないよ」
「そ、そうか…」
これならちょっとホッとした。クラスで変態扱いされるところだった。
朝霧「だから何かしてほしいことがあるなら言ってね。ほかの人には内緒してるから」
「…」
ここまで言われてなんとも思わないわけがなかった。朝霧は俺のことを思って言いふらすようなこともしないし、俺の性癖にまで付き合ってこようとしてくれている。

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