6月 03, 2020 **日

六日目

私もやっとにいちゃんを超えて、これからどんどん伸びていける。
朝起きたら頭が天井に当たってしまうくらい伸びてて、にいちゃんがまだ小さく見えて。
そう思っていた、だけど。
「299cm…」
瀬菜「え、な、なんで⁉︎」
まさかここで止まってしまった。測る前にはわかっていた、だって昨日天井まですれすれところまで届けた私は今日もすれすれのところまでしか届いてない。
「成長が、止まった?」
瀬菜「そんな」
ここで私は医者さんが言ってたことを思い出す。私は2mを超えられる。それは確かに、だけどそれと同時に私は3mに届く寸前で、成長が止まった。
昨日は72cmも伸びていたのに、今日が1cmも伸びないなんて…
にいちゃんはそれでも私より低いけど、もっと低く見えると思ってた。
「今日もでかけない?」
にいちゃんがそんな提案をしてきた。でかけたいのはいつも私の方なのに…
瀬菜「う、うん」
にいちゃん「じゃあちゃっちゃっと準備を済ませるよね」
それから私たちはまだ家から出た。
街にでればすぐに注目を集めてしまう。みんな私の方を見てきている。もっと小さかった時なら恥ずかしいけど。今は嬉しい気持ちの方がずっと大きい。
瀬菜「えへへ、いっぱい見られてるね」
「そりゃ、こんな高くて綺麗な瀬菜だからな」
瀬菜「もうにいちゃんはこういう時世辞がうまいな」
「世辞じゃないって」
あ、そっか、にいちゃんは私が落ち込んでるのを見て、私に元気付けするためだったか。
身長が私より低いからちょっと見下してしまったけど、にいちゃんはそれでも私を気遣ってくれている。
瀬菜「にいちゃん、ありがとうね」
「なんのことかな」
そこで空からねえちゃんが顔を覗かせた。
莉菜「お兄ちゃん、聴いて聴いて、私、ママより大きくなったよ!」
「え、本当⁉︎」
莉菜「そうだよ。えへへ、今ちょっとこっちきて」
そしてねえちゃんの指に乗せて俺たちは宇宙空間に入る。
ねえちゃんの指はとても大きくて、前にも見たけどそれはどんな星でもその中に収められるくらい大きかった。
莉菜「ふふ、今や宇宙でも私の指より小さくなったよね、でも宇宙ってたくさんいるよね、あんなに大きいと思っていたのも、こんなにちっちゃくて、それもこんなにたくさん指に乗せてる」
アリル「宇宙はいっぱいいるよ、それは数えきれないくらいで、宇宙の外には宇宙をも包むもっと大きいものがいるよ。でも、さすが私の娘ね、こんなに大きくなれて」
ねえちゃんのママはその隣にいて、今はねえちゃん半分の大きさしかない。でもそれはおばさんが縮んだのではなく、ねえちゃんが追い越していた。
莉菜「えへへ、瀬菜も頑張らないとね」
そこでねえちゃんは私に声をかけてきた。
瀬菜「え?」
莉菜「瀬菜ちゃんも育ち盛りでしょ、原因はわからないけど。もうお兄ちゃんを超えたのって?」
瀬菜「う、うん…でも、もう伸びてないの」
莉菜「え、どういうこと?」
「今朝測ったけど、昨日の数値と変わっていない」
莉菜「そう、なんだ…瀬菜ちゃんすごいよ。人間なのにあんなに伸びたから、今は世界一高い人だよね」
アリル「特製ミルクも頼らずにそれほど伸びた方が不思議だよ」
瀬菜「うん…」
そんなこと言われても、私はこんなところで全然満足できないのに。それから私たちは家に帰った。
「瀬菜」
にいちゃんは穏やかな声音で私を呼んだ。
瀬菜「にいちゃん?」
「俺は信じてるよ。瀬菜がまだ伸びるって」
瀬菜「に、にいちゃん!っ、大好き、にいちゃん!」
やはりにいちゃんが私のこと一番目わかってくれている。あ、この時強く感じていた、私はにいちゃんが好きだって。
瀬菜「ありがとう、にいちゃん」
瀬菜:身長:299m 体重:322.0kg
莉菜:身長:9.82×10^13光年 体重:1.91×10^87t 一秒ごとに2,922,826,745,372光年伸びる

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